【凱旋門賞】を振り返る

先週末は、国内に関してはあまり振り返りたくない(お察しください)ので、凱旋門賞のみ振り返ります。まぁ、こっちも馬券は負けたんですけどね。

サトノダイヤモンドは予想通り残念な結果。ただでさえ難しい海外遠征、その上で世界最高峰のレース。全てが上手くいったとしても勝つことは容易じゃないのに、前哨戦を含め調整段階でケチがついて、当日も理想には程遠い道悪。でもって不利な外枠。そもそも、オルフェやディープに比べれば力不足も否めない。ま、順当な結果ですよね。それでも特に単勝は売れてくれるので、エネイブルの単勝で1.8倍もつくのは美味しかったです。3連単で厚め勝負してしまったのでトータル負けでしたけど…

ちなみに、同年のキングジョージと凱旋門賞を制覇した馬はこれで史上7頭目だそう。思ったよりも少ない印象。ゲームだと簡単に出来るんですけどw 実際には、相当に難しい事だという事ですよね。で、調べてみると、そこに名を連ねているのはとんでもないビッグネームばかり。せっかくなので簡単に紹介します。
※左の年数はキングジョージと凱旋門賞を同年制覇した年

1956年 リボー(Ribot)
ちょっとでも血統をかじった方や、競馬ゲームなどをやられたことのある方ならおそらく目にしたことがあるであろう名前ですね。「リボーの血は大舞台に強い」などと言われ、今でも血統予想の記事などでは頻繁にその名前を見かけるくらい。現役時代の成績も突出していて、生涯成績はなんと16戦16勝。しかもそのほとんどが圧勝というもの。56年はミラノ大賞典を8馬身差で圧勝した後、イギリスでの評価が低いという理由でキングジョージに参戦し、イギリスの競馬関係者を黙らせる5馬身差圧勝。そして、同年秋に凱旋門賞を持ったままの大楽勝で連覇を達成して引退。いやはや、あらためてみると、ホントとんでもない成績ですね。なお、リボーは“馬”でありながら、20世紀のイタリアのスポーツ選手で第4位という評価を得ています。当時のイタリアは平地競走があまり盛んではなかったようですから、そういった背景も踏まえると、この評価は相当なものですよね。

1958年 バリモス(Ballymoss)
現代にその血を多く残しているわけではないので、日本のファンにはあまり馴染みのない名前ですが、3歳時に愛ダービーと英セントレジャーを制し、4歳時はコロネーションC、エクリプスS、キングジョージ、凱旋門賞を4連勝と、その成績は文句なしで歴史的名馬のそれ。英ダービーを6勝、ニジンスキーやアレッジド、サドラーズウェルズなどを手掛けた名伯楽ヴィンセント・オブライエン調教師が平地参入後に初めて手掛けた名馬と言っていいかも知れませんね。ちなみに、種牡馬としてもまずまずの成果を収め、日本でもバリモスニセイという馬が、今の格付けで言えば重賞6勝の活躍をしています。

1971年 ミルリーフ(Mill Reef)
これも血統ファンや競馬ゲーム好きなら知ってて当然の名前でしょうか。管理人も昔はかなり競馬ゲームにハマっていたので、ミルリーフというとミルジョージの父というイメージがありますね。生涯成績は14戦12勝2着2回とほぼパーフェクト。3歳時、クラシック初戦の英2000ギニーで2着に敗れたものの、続く英ダービーを勝利すると、さらにエクリプスSをレコード勝ち。さらにさらにキングジョージも6馬身差で圧勝し、休養を挟んだ凱旋門賞もレコードで完勝。翌年、ガネー賞を10馬身差で大楽勝すると、コロネーションCは馬インフルエンザ(レース後に発覚)にかかりながらも何とか勝利。しかし、凱旋門賞連覇を狙い調整されていたところ、左前脚の管骨を骨折し、一命はとりとめたものの、これが原因で引退を余儀なくされました。もし怪我がなければ、さらにとんでもない成績を残していたであろう事は想像に難しくありません。

1986年 ダンシングブレーヴ(Dancing Brave)
これももちろん有名ですね。1980年代のヨーロッパ最強馬とも言われる名馬です。当時、今で言う「ロンジン・ワールド・ベストレースホース・ランキング」で141ポンドという史上最高のレーティングを獲得した事でも知られています。このレーティングは後年、見直しが図られ138ポンドの修正されましたが、それでも歴代でフランケルの140ポンドに次ぐ2位。レーティングの見直し自体に賛否両論あって、いまでもこれを最強馬とする声も少なくありません。ダンシングブレーヴと言えば、やはり凱旋門賞のレコード勝ちがキャリアのベストでしょう。史上最強メンバーとも言われる86年、ロンシャンでは致命的とも思える4角12番手から大外を回して豪快な差し切り勝ち。ちなみに、日本人が重い重いというあのロンシャンの馬場でラスト1Fのラップが10秒8。まさに異次元の末脚ですね。引退後は色々あって種牡馬生活数年で日本に輸入され、キョウエイマーチやキングヘイローなどを輩出していますが、個人的にはダンシングブレーヴが輸入される前、マル外として日本で走ったダンシングサーパスという馬が好きでした。ビワハヤヒデとの馬連1点で厚く張った94年の宝塚記念(結果は1着3着。アイルトンシンボリさえいなければ…)は今でも鮮明に覚えています。

1995年 ラムタラ(Lammtarra)
30代後半以上の競馬ファンなら誰もが知るであろう、鮮烈な印象を残した神の馬。生涯成績4戦4勝の欧州三冠馬。2歳夏に準重賞でデビュー勝ちを果たすと、その後色々(調教師さんが亡くなったり、馬自身が病気になったり)あって復帰に時間がかかったものの、なんとか英ダービーに間に合い、これを勝利。さらにキングジョージと凱旋門賞も当たり前のように勝利で欧州三冠を達成。で、引退。まるでドラマや映画のような競争生活ですよね。これが日本に輸入されると聞いた時は、それはもうテンションが上がったものですが、結局、日本では種牡馬として大成できず。数年でもともと居たダルハムホールスタッドに買い戻される事に。この頃、日本と欧州の競走馬の適正の差というものを強く実感した覚えがあります。「ニジンスキーの直子で欧州三冠馬のラムタラの子がこんなに走らないなんて…」と。仮に、当時一口馬主なんかやってたら、たぶんラムタラの子で大損ぶっこいてたでしょうねw

2007年 ディラントーマス(Dylan Thomas)
達成したのが近年という事で覚えてはいますが、先に挙げた5頭に比べると、現役時代も種牡馬としてもちょっと物足りない印象。GI6勝もしていて物足りないってのも何だかなぁと思いますが、[10.4.1.5]でけっこう負けもありますからね。十分凄い名馬なんですけど、他が凄すぎますから。

で、

2017年 エネイブル(Enable)
陣営は来年の現役続行も表明していますから、今の時点では暫定評価に過ぎませんが、それでももう既に史上トップクラスの歴史的名馬でしょう。キングジョージと凱旋門賞の同年制覇は7頭目ですが、3歳牝馬としては初。ちなみに、英国の3歳牝馬が凱旋門賞を勝つのも初。来年、異なる舞台(ロンシャン)で連覇達成とかなったら本当にとんでもない事ですよね。これからどれだけのレースを走るのかわかりませんが、「ロンジン・ワールド・ベストレースホース・ランキング」は、レース全体の内容というよりも2着馬につけた着差を重視しているところがあるので、エネイブルのようにぶっちぎって勝つ馬は高評価を得やすいですし、もしかしたらアローワンス込みでフランケルに迫る可能性すらあるのではないかと思います。

今回の凱旋門賞を受け、ちょっと歴史も振り返ってみたりして改めて感じたのは、世界は広いってこと。日本馬の凱旋門賞制覇。メディアは「手の届くところまできた」といった感じで伝えていますけど、上で挙げたような化物がいるのが世界の競馬。まだまだ近いようで遠い気はしますね。ちなみに、皆さんご存知の通り、近年の凱旋門賞は牝馬の成績が抜群で、特に斤量の恩恵が大きい3歳牝馬が非常に強い。と考えると、やっぱり3歳牝馬で挑戦するのが勝利への近道な気がしないでもない。

例えば、ソウルスターリング。うーん、今年はエネイブルだからさすがに無理だったか。しかし、過去を振り返れば、ジェンティルドンナやブエナビスタ、ダイワスカーレット、さらにシーザリオやエアグルーヴ、ファインモーションにヒシアマゾンあたりが挑戦していたらどうなっていたか。時代背景は別として、その当時の国内における評価やレース内容からすればけっこういい勝負になっていたような気も。今、国内で強い牝馬は大半がクラブ馬(良血牝馬は繁殖入り前提のため、セールで手放さず、引退後は牧場に戻ってくるクラブ馬にする事が多い)ですから、資金的な部分ではもっと積極的な遠征も可能なはずです。まぁ、仮に自分が一口持っている馬だったとしたら、無謀な海外遠征されるのは勘弁ですけどねw

それはそれとして、やっぱり世界の競馬は面白い! 馬券を買ってドキドキしながら海外のビッグレースを観たいので、是非、懐具合に余裕のあるオーナーさんはバンバン海外遠征してください。アルバートがメルボルンを回避して、ブリーダーズCも誰もいかなそうで、今年はもう香港くらいしか海外馬券なさそうなんで、正直、ちょっとつまらんのですよ…

 - レース回顧 海外GIの考察