女性騎手に減量の恩恵

 「JRAが来年1月から女性騎手に限り、減量特典を大幅に緩和する新規定を導入することがわかった」とのこと。

 詳しくは週明けに正式発表されるということですが、現状でわかっているのは、現行の減量特典から1kg減(4kg減からスタート)となり、さらにキャリアや勝利数に関係なく永久に2kg減が適用されるということ。なお、重賞とハンデ戦は適用外。

 個人的には「やっとか…」という部分と、「2kgは多くね?」という、肯定と否定の両方の感情があります。女性騎手に対する減量特典自体は賛成。海外ではフランスが既に導入済みで、イギリスでも議論の最中といった感じ。日本でも地方競馬では導入されているところがあり、そういうところでは女性騎手の活躍が盛り上がりに一役買ってますからね。

 ただ、既に導入済みというフランスでは新規則になってから僅か一年足らずで、平地競走における女性騎手の恩恵を2kg減から1.5kg減に変更しています。これは男性騎手からの「女性騎手に対してのアドバンテージが大きすぎる」という意見を受けてのことですが、実はこの件に関しては男性だけではなく、英国で最も成功した女性ジョッキーでもあるターナー騎手も「2kgは寛大すぎる」と苦言を呈していました。確かに2kgは大きいですよね。

 で、おそらく今回の決定に関してJRAは、先んじて導入したフランスの事例を大いに参考にしているはず。であれば、日本は最初から1.5kgでいいじゃんとも思うわけです。まぁ、2kgで大きすぎると判断すれば、フランスみたいに変更していくとは思いますが、一度決めたことはなかなか変えたがらないのが日本人の悪いところ。フランスのように一年足らずでの改善はおそらくないでしょう。そうなると、菜七子騎手や、これに続く女性騎手がいくら活躍したところで、減量のおかげという色眼鏡がつきまといかねないかと。減量特典はあっていいと思いますが、それが本当に適正な減量なのかどうか、しっかり見極めてほしいと思います。

 また、若手の女性騎手となると最大4kg減となるわけで、これはその騎手自身にとっても決していいことばかりではないような…。近年、若手騎手が体重調整に失敗して騎乗停止処分なんて話がたまに出てきます。男女問わずジョッキーは基本的に小柄な方が多く、男性も女性も基本体重はそこまで大きくは違わないですから、4kg減って人によってはかなり減量がキツくなるんじゃないですかね? もし、それが原因で体重超過続出とかなったら目も当てられませんよ。年齢を重ねれば減量が厳しくなるのは男女とも同じでしょうし、そうなると永久に2kg減という斤量が、逆に女性騎手の活躍の場を狭めてしまう可能性もゼロではないかと。実際、フランスでも減量に苦しんでいる女性騎手は少なくないらしいですからね。詳しくは知りませんが、日本よりも斤量が重いイメージのあるフランスですらそうなんですから、日本の競馬の斤量で、となると…。はたして大丈夫なのか…、ちょっと心配になってしまいます。

 それに、この女性騎手の負担重量の恩恵について欧州では、当の女性騎手の大半が反対意見と聞きます。そこには先に挙げた減量の問題もあるでしょうし、それ以前に「男と同じ土俵で戦ってやる」という彼女たちのプライドもあるのでしょう。この件について、おそらく正式発表の後には菜々子騎手のコメントなんかも出てくるでしょうから、彼女がどう考えているのか、非常に興味深いところです。

 ま、最大4kg、永久に2kgの減量が本当に適正な重さなのかどうかは疑問が残りますが、女性騎手が活躍しやすい、女性が騎手という仕事に挑戦しやすくなることは、今後の競馬界を考えれば歓迎すべきこと。何事にも腰の重いJRAにしては、割と思い切ったことをしたなぁと思いますし、そこは素直に評価して、これが今後の競馬界にどういった影響を与えるのか、いち競馬ファンとして前向きに見守っていきたいと思います。

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