ディープインパクト 死す
社台ファームは30日、ディープインパクトが急逝したことを発表しました。
原因については、既に各メディアをご覧になった方も多いでしょう。もともと首を痛めていて、その手術を28日に行い、術後の経過は良好だったものの、29日になって起立不能の状態に。30日にレントゲン検査を行なったところ、頸椎に骨折が見つかり、回復の見込みがないことから、安楽死の処分が取られたとのこと。
長く競馬を見ていれば、馬の死に関する話というのは嫌でも耳に入ってきます。事故や怪我、病気もあれば、天寿を全うしての老衰など。人間よりも寿命の短いサラブレッドですから、好きだった馬の死に直面することは避けようもありません。
ですが、ニュースを見た瞬間、自分の目を疑うほどの衝撃を受けたのは久しぶりです。それほど信じがたい事実でした。
個人的な好き嫌いで言えば、ディープインパクトは決して好きな馬ではありませんでした。あまりに完璧すぎてスキがなさ過ぎたのがその理由です。ノーザンファーム生産の良血馬で、オーナーは金子さん、鞍上には武豊。バックボーンから何から何まで、絵に描いたようなエリートですからね、ひねくれものの管理人の好みからはハズれてたんですよね。馬券的にも、断然人気で当然のように連戦連勝じゃあ面白みは皆無ですから。
なので、どちらかと言うと、穴党の管理人にとってはディープは敵のような存在でした。だって、常に1倍台の人気だから本命にはしたくないんだけど、どうやってもこれに勝てる馬が見つからないんですから。こんなに穴党泣かせの馬はなかなかいませんよ。オルフェーヴルとかは、どこか危うさがあって「もしかしたらやらかすかも…」と思って他の馬に印を回せたけど、ディープだけはどうやっても評価を落とす要因がありませんでしたから。本当に憎らしいほどの強さでした。
ただ、好みはともかくディープインパクトの功績が日本競馬史においてトップクラスであることは重々理解しています。ハイセイコー、オグリキャップに続く第三次競馬ブームの立役者ですし、ディープがいたからこそ競馬を好きになった人もたくさんいたと思います。ディープをきっかけに競馬を知った友人から「競馬を教えて」なんてこともありましたし、バブル崩壊とともに人気が低迷していた競馬に再び火を付けてくれたのは、間違いなくディープインパクトですから、馬券はハズれても、ディープと武豊の活躍は一競馬ファンとして単純に嬉しかったものです。
理想を言えば、もう何年か種付けした後、種牡馬を引退して悠々自適な余生を過ごし、天寿を全うしてほしかったですが、さすがに頚椎骨折ともなると関係者の判断を責めることも出来ません。なにより、つらい思いをしているのは関係者の方々ですからね。
種牡馬としても、正確な数字はわかりませんが、父サンデーサイレンスに劣らぬ活躍で数々の後継種牡馬を輩出しています。が、まだ父を超えるような存在は出てきておりません。ま、あまりに完璧な戦歴だから、父を超えるとしたら凱旋門賞を勝つくらいしかないんですけど、残り数世代、そんなスーパーホースが出てきてくれることに期待したいですね。願わくば、その背中には武豊でロンシャンの舞台に立つところをみてみたいものです。
とにかく今は、ただ安らかに。ご冥福をお祈り致します。