男・藤田、電撃復帰
『突然の引退から1年半。藤田伸二がホッカイドウ競馬の騎手として現役に復帰する意思を固めた』
いやぁ、驚きました。引退が突然なら、復帰も突然。しかも、JRAではなくホッカイドウ競馬。地方のトップジョッキーが中央に移籍するケースは多くありますが、中央の騎手が一度引退した上で地方の騎手を目指すというのは相当なレアケースでしょう。
もっとも、藤田伸二の引退の理由は、現在のJRAに対する不信感というか、中央では競馬に情熱を傾けられないから、といった感じがしたので、生まれ故郷の北海道で騎手復帰はある意味では彼らしい決断のような気もします。
藤田伸二と言えば、特別模範騎手賞を2度も授賞しているフェアプレー。これについては色々な考え方があって、競馬は人も馬も命懸けでやっているのだから、その中でフェアプレーを徹底するのは素晴らしい事という見方がまず一つ。これは先日のフィリーズレビューを見ても本当にそう思います。あれだって一歩間違えれば大事故になりかねなかったわけですから。
しかし、関係者の中には、フェアプレーをただの安全運転と揶揄する人も少なくないようです。競馬が騎手個人のスポーツなのであれば藤田伸二の騎乗スタイルは賞賛されるべきことなのでしょうけど、一つ一つのレースに馬主、調教師、厩務員など、多くの関係者の生活がかかっているのも事実。勝負をせずに安全運転でただ回ってくるだけでは、勝つことに必死になっている関係者にとっては納得のいかないこともあるのでしょう。
彼のスタイルについては、まぁ好き嫌いが別れるところでしょうね。個人的には、以前は手放しで素晴らしいと思っていましたが、偶然知り合った厩務員の方と話した時に「こっちは何とかして勝ちたいと思って頑張って仕上げたのに、あんな騎乗をされたらたまったもんじゃない」といった感じの事を聞きまして。フェアであることは確かに大事だけど、それとリスクを犯さないことはちょっと違うのかなぁなんて気もしています。
まぁ、それでも藤田伸二は嫌いではないです。スタイリッシュな雰囲気を持ちながら、良くも悪くも昔気質なところがあって、馬主や調教師との人間関係を何よりも大切にする騎手でしたから。だからこそ、エージェント制に異議を唱え、今の中央競馬が嫌になってしまったのでしょうけど。
そんな彼がホッカイドウ競馬でどういった競馬をみせるのか。それは非常に楽しみ。地方の方が馬主や調教師との距離は確実に近いですからね。
ただし、復帰を決意したといっても、それですぐに乗れるようになるわけではありません。中央の騎手経験者であっても、地方競馬の新規騎手免許試験を受験しなければ騎手にはなれず、試験は年に一度のみ。道営の場合は夏頃に募集が締め切られてそこから試験なので、おそらく合格発表は秋口。ということは、冬がシーズンオフのホッカイドウ競馬なので、藤田伸二が騎手として復帰するのは早くて来春ということになるでしょうか。
よく競馬マンガとかだと、地方から中央、世界へ。なんてパターンが多いですけど、ホッカイドウ競馬の騎手として、道営所属の馬で中央のクラシックに挑む姿なんかも是非みてみたいものですね。